神田村と共に(神田村こう使っているE)
(2013/4/15全国書店新聞より)


 この季節、本屋の朝はキビシイ。雪を掻き分けて店内に入り、まずは照明と暖房のスイッチを入れ、水道の元栓を開きます。ついで運び込んだ荷物をチェックし、配達分と店売りに仕分けし並べていくのです。暖房機はフルに稼動させても1時間くらいは確実に氷点下での作業になります。一緒に働いてくれるスタッフにも感謝ですが、早朝まだ暗いうちに配送し、預けた鍵でシャッターを上げ、店内に運び入れてくれる運転手さんにも頭が下がる思いです。

どんなにシバレがきつくても新しい本と出会う時はやはり嬉しいものです。特に注文品が入っている箱を開けるときのワクワク感はなんとも言えません。首都から二日もかかって届いた一冊、一冊にお客様の期待がこもっています。様々な流通チャネルがある中でわが店に注文してくれたお客様と同じ気持になっているのです。

書店の仕事の真髄は「一冊か二冊しか売れない(逆に言うと一冊か二冊なら売れる)本をいかに仕入れるか」にあるのではないかと思っています。
お店に来られるお客様の中の、一人か二人が買いそうな本を注意深く探す事こそが地域に根を張る店作りの決め手ですね。その為の根拠となる情報収集としては客注と新刊予約に全力で取り組む事が最低条件になります。
大取次にとっては、そんな書店の思いや取り組みに応える事は実に手間の掛かる面倒なものであったに違いありません。出版社が持ち込む大量の本を「配本」するのが仕事だと思っているのですから仕方がありません。でもこの業界で利益が生まれるのは実にお客様に本が渡った瞬間でしかありません。
そのお客様と共に一冊の本を探す私たちにとって今、神田村は実に頼りがいのある存在です。個性的な各取次それぞれに得意とする版元があり、角川、新潮、文春、幻冬舎、集英社、小学館等々の新刊が入手できる事、客注と新刊予約でお客様の要望に応えられるという(実はあたりまえの)事に、今更ながら驚いています。

書店が 複数の仕入先を持つという事の重要性と、そして取次が寡占化する事の恐ろしさも併せてひしひしと感じている今日この頃です。

 

 

某書店より
 

弘正堂
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